「本を出版したい」を実現するブログ ――目指せ商業出版

現役の書籍編集者が教える、実績ゼロから商業出版を実現する方法。

編集者の目にとまる! 出版企画書の応募方法

 出版企画書の作り方については、前回の記事「出版企画書の書き方・作り方」でお伝えした通りです。

 

s-ukix.hatenablog.com


 では、作った企画書をどうやって編集者に届ければいいのでしょうか? 最近で流行っているやり方で、私も効果的だと感じている方法は、「編集者あてに企画書を送付する」というやり方です。

 

◆出したい本と同じジャンルの本を読み、担当編集者名を見つける

 本の奥付(著者プロフィールやスタッフクレジットが掲載されている巻末ページ)を見るとその本の担当編集者の名前が書いてあることがあります(ちなみに、「発行人」は社長の名前なので違います)。あるいは、本の「はじめに」「おわりに」に、著者からの謝辞が書いてあり、そこに編集者の名前が出ていることもあります。

 あなたが出したい本と同じジャンルの本で担当編集者名を探し、そこに掲載されている編集者宛てに一筆添えて、企画書を送るとよいでしょう。個人名であれば、確実にその編集者まで郵便物が渡ります。同じジャンルの本をつくっている編集者であれば、少なからずそのジャンルに興味があるので、かなりの確率で編集者の目にとまるはずです。

◆編集者によっては「SNS」でのアプローチもOK!

 また、SNSをやっている編集者ならSNSで連絡するのもいいでしょう。その編集者の担当書を読み、その感想とともに「あなたと本をつくりたい。企画を見てほしい」とアプローチすれば、編集者も悪い気はしないはずです。編集者によっては、郵送よりもSNSのほうが効果的な人もいます。

 ただ、自分のまわりの編集者を見ている限り、そうした連絡にしっかりと返事をしている人もいれば、完全に無視している人もいます。比較的、若い編集者のほうが、連絡を返している印象があります。

 ちなみに、私は連絡を返すほうですが、あまりに企画内容や著者が悪い場合は時間がもったいないので返信はしません。「いい企画、著者の場合は返信する」という編集者が圧倒的多数だと思いますので、数名にアプロ―チしても連絡がかえって来ない場合は、企画書を見直したほうがいいでしょう。

◆公募があまりオススメできない理由

 ちなみに出版社によっては、ホームページなどで「持ち込み企画募集中」とメールアドレスや住所を公開しているところもあります。もちろん、ここに応募するのも一つの手ですが、編集者に直接送るよりは、実現の可能性は低いといえます。ここに応募すると一部の編集者がザっと見て判断してしまったり、最悪の場合、放置されて誰の目にも触れずに終わってしまうことすらあります。それよりも編集者に直接手紙を出すほうが、確実に企画書を見てもらえるはずです。

 ただし、編集者個人に送る場合は、とくにマナーには気をつけましょう。言葉遣いや対応はもちろんですが、とくにやってはいけないのが同じ出版社の編集者複数人に、同じ時期にアプローチすることです。「この人、だれでもいいんだなー」という印象を受けますし、「マナーのない人」として信用も失います。出版業界は業界が狭いので、悪い著者のうわさはすぐに広がります。著者になりたいなら、そのあたりも気遣ったほうがいいでしょう。

出版企画書の書き方・作り方 ~必ず入れるべき7つの項目 

 今回は、書籍企画書の作り方について解説していきます。書籍の企画書では、次の7つの項目は必ず入れるようにしてください。

1.本のタイトル

 編集者はまずタイトルから見ます。どういう本かが明確にわかるタイトルをつけましょう。また、文字の大きさやスタイルも変えて、本全体の雰囲気がタイトルから伝わるようにするとなおよいです。たとえば自己啓発系なら明朝、ビジネススキル系ならゴシックなどすると、雰囲気が出てきます。

2.帯コピー

 帯コピーを入れる人は意外に少ないですが、私はできれば入れたほうがいいと考えています。ただし、なんでもかんでも入れていいわけではありません。よくいるのは広告コピーのようなカッコイイ表現を使いたがる人。持ち込みの企画書は、あくまで編集者にアピールするものですから、本の内容や魅力が伝わるようなコピーを入れるべきです。次のような内容を意識すると、魅力的なコピーが書けると思います。

■「著者の強み」を書き出す

→「5000人の生徒を指導した塾講師が明かす!」「元マッキンゼーのマネジャーが教える」など

■この本を読んだ「読者のメリット」を入れる

→「会計の知識が2時間で身につく」「たった1か月で英語がペラペラに!」など


3.著者プロフィール

 これはめちゃくちゃ大事です。持ち込み企画は「プロフィールが9割」と言っても過言ではありません。あなたの送った企画がどれだけ微妙でも、著者として魅力がある人であれば、編集者は一度会って話を聞いてみたいと考えます。編集者は、自分が料理すれば化けるであろう「良い素材」を求めているからです。

 著者プロフィールでは「数字」を意識してみてください。「1000人を指導した」「担当した100社の企業の業績を改善した」などです。「多数の」「多くの」と表現するより、魅力的なプロフィールとなるはずです。また、これまで勤めた企業名や仕事で担当した企業名なども売りとなるので、虎の威を借りれるところは遠慮せずに借りていきましょう。

4.企画概要

 企画のおおまかな概要を書きます。伝えたいことが多すぎて理解しがたい文章になってしまっている人が多いので、まずは「一言でいえばどんな企画なのか?」を自分の中でしっかりと明確にし、そこから逆算してもっともわかりやすく魅力的に伝わる内容を考えていきましょう。
 

5.ターゲット

 現状の予測でいいので、想定しているターゲットを書いてください。20代ビジネスパーソン、経営者、40~60代の女性を中心に幅広く……など、かんたんなものでかまいません。

6.類書

 あなたが出そうとしている企画に近い本はどれなのか、アマゾンなどで調べて掲載しておきましょう。ただし、ここで頭を悩ませる必要はありません。たいていの人は的外れな類書を挙げてきていますが、編集者目線でいえばそこはあまり気にしていません。結局、本気で企画を進めることになったら、自分で類書をしっかり調べるからです。

7.構成案(もくじ)

 最低でも、各章で何を書くかは明確にしておきましょう。

 第1章 ○○○

 第2章 ○○○

 第3章 ○○○

 ……

 といった具合です。

 

 ちなみに、企画書と一緒に原稿を送ってくる人がいますが、原稿を添付する必要はありません。むしろ「いきなり原稿を書いて送ってきているな……めんどくさそう……」という印象も受けます(そういう人に限って、めちゃくちゃ電話かけてきたりする)。

 小説などの創作分野では別ですが、ビジネスや実用書の場合は、編集者がいきなり原稿をがっつり読むことはほとんどありません。基本的には、企画書をザっと見て、気になる人のみに連絡をしますので、原稿は添付しなくてもよいでしょう。

本が出版されるまでの流れ

 今回は、本を出版するまでにどのようなステップがあるか、その流れについてざっくりとした全体像をお伝えしていきます。


①企画書の作成

 まずは企画の方向性を編集者と著者が相談しながら詰め、企画書を作成していきます。企画を持ち込んだ場合でも、その企画を揉みなおし、新たな企画書を作成することとが多いです。調整した企画書を企画会議に提出し、無事に会議を通過すれば、晴れて書籍化に向かってスタートを切れます。


②目次案(構成案)の作成

 出版社によっては、企画書作成の段階でここまで作成することもあります。各章のテーマ、そして中身までを詳細に組み立て、全体の内容や流れを明確にしていきます。

③サンプル原稿の作成

 目次案が固まれば、実際に原稿を執筆していきますが、いきなりすべての原稿を書いてもらうことはしません。まずは、はじめに~1章分くらいを「サンプル」として執筆してもらい、内容の方向性や文体・表現などをすり合わせます。

④全体の執筆

 サンプルで原稿の方向性をすり合わせたら、残りの章の執筆も進めてもらいます。この場合でも、章ごとに編集者にチェックしてもらうことが多いです。そして全体の原稿がそろったら、編集者が詳細に原稿を確認・整理し、ゲラにする準備を整えていきます。

⑤ゲラの確認

 ここまででやり取りしている「原稿」は、だいたいはWordファイルです。これをゲラ(実際のレイアウトデザインに当てはめたもの)にし、初校、再校と確認を進めていきます(3~4週間ほどの時間がかかります)。Word原稿で完璧に整理したと思っていても、実際に紙で見ると、受ける印象が変わりますので、ここでいくつも修正箇所が出てくるでしょう。


⑥カバーデザインの作成

 初校ゲラが出たあたりで、本のタイトルが確定します。ちなみにタイトルは、社内でタイトル会議をして決めることが多いです。タイトルが決まれば、編集者はデザイナーにカバーデザインを依頼します。カバーについては、どの紙を使うか、どんな加工にするかまで、予算を考えながらデザイナーと相談し、編集者の裁量で決めていきます。

⑦データ入稿

 ここまで整えていった本文、そしてデザイナーとつくりこんだカバーのデータを印刷会社に入稿します。


プルーフ、色校の確認

 印刷会社から本文の最終確認をするための「プルーフ」があがってきます。ここでノンブル(ページ数)はしっかり入っているか、誤字脱字はないかなど、最終チェックを行います。

  カバーについては「色校」という、実際の紙に刷ったものがあがってきますが、ここでは発色などを確認します。「スミ文字をもっとハッキリ出してください」というように、気になる箇所を印刷会社に伝えます。また、ここで誤字脱字などが見つかれば、デザイナーにデータを修正してもらい、再入稿します。


⑨見本出來

 プルーフ、色校の確認を終え、印刷会社に戻したら、編集者の仕事は終わりです。その約2週間後には本の「見本」があがってきます。見本といえども、実際に販売する本とまったく同じ状態のものです。もし、ここで致命的な誤植等が発見されたら、そのときは、至急印刷会社に連絡し、すべて刷り直しをすることもあります。


⑩配本

 見本出來から1週間ほど経つと、取次会社を通して書店に配本され、発売となります。

 

  いかがでしょう。これが出版までのおおまかな流れです。これから本を出したい人などはぜひ参考にしてみてくださいね。

編集者って何してるの? 書籍編集者の仕事内容を紹介します

 今回は、書籍編集者の仕事について、かんたんに紹介していきたいと思います。書籍編集者はふだん、おおまかには次の4つのことを同時進行しています。

1.新しい企画の仕込み

2.直近の刊行書籍の進行

3.数か月後に刊行予定の書籍の原稿整理

4.もっと先の企画の打ち合わせなど

 このような仕事を主にしています。


1.新しい企画の仕込み

 編集者が常に意識している仕事の1つに「企画の仕込み」があります。多くの出版社では、編集者に刊行点数ノルマが課せられています(売上ノルマの場合も有り)。その数は版元によってまちまちですが、平均でだいたい年間8点くらいです。多いところでは年間20点以上担当しなければならない版元もあるようです(ほとんどの制作を編プロに投げているようですが)。

 年間8点としても、2か月に1本以上は新しい企画を企画会議で通していく必要があります。ですから編集者は、日々、「何かいい企画がないかな……」と必死に企画のアイデアを探しています。特に、担当点数が多い版元の編集者は必死です。とにかくどんな企画でもいいので、手持ちの企画を増やしたいと思っています。そうしなければ、編集長に詰められるからです(笑)。


2.直近の刊行書籍の進行

 編集者は会議で通った企画をいくつも抱えています。その中で特に時間をさくのは、当然、直近刊行予定の企画です。だいたい刊行予定の3週間前には校了となりますが、その校了日までの1か月くらいは「ゲラ」の確認をしたり、カバーデザインをデザイナーと相談しながら制作したりしています。

「ゲラ」というのは、実際のレイアウトデザインに落とし込んだ原稿です。だいたい最初はWord原稿で原稿を整理していきますが、そのWord原稿をDTPデザイナーに渡し、実際のレイアウトデザインに落とし込んでもらったものになります。

 最初にあがってくるゲラのことを「初校」と呼びます。そして、初校に修正を入れたものが「再校」であり、その後「三校」「四校」……となっていきますが、基本的には再校や三校あたりでいったん確認は終わります。その後、印刷会社からあがってくる「プループ」と呼ばれるもので誤字脱字などを最終チェックし、校了することが多いです。

 カバーデザインについては、編集者がイメージするデザインを体現できそうなデザイナーを探し、依頼します。そして、打ち合わせのうえでカバーラフを作成してもらい、そのラフから1つの方向性を決め、ブラッシュアップしていきます。

3.数か月後に刊行予定の書籍の原稿整理

 編集者は、直近刊行の企画だけでなく、今後刊行が控えている企画の原稿も同時並行的に確認を進めています。たとえば、著者に原稿を書いてもらうときには、「サンプル原稿」と呼ばれる、その名の通りサンプルを最初に書いてもらうのですが、それを確認し、フィードバックしたりしています。

4.もっと先の企画の打ち合わせなど

 上記のような編集実務のほかに、著者候補として企画会議をしたり、狙っている著者のセミナーに足を運んだり……外出が多いのも編集者の特徴の一つです。中には、外出のままカフェで仕事をする編集者もいますので、基本的に編集部はガランとしています。

 

 いかがでしょう。ざっくりと書籍編集者はこんな仕事をしています。この書籍編集者の日常がとてもよくわかる『重版未定』というコミックエッセイもぜひ参考にしてみてください。この本、本当にリアルです。書いてあることに、ほとんど嘘や偽りがなく、実際に読んだときは「おー」と驚きました(笑)

 

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 マンガでとても読みやすいので、本を出版したい人や出版業界を目指す人はぜひ参考にしてみてください。

「本を出版したい」あなたが最低限知っておきたいこと(商業出版と自費出版の違い)

 今回は、本の出版に最低限必要な知識をお伝えしておきます。

 このブログを見ている方は、少なからず本を出版したいと思っているはずです。

 では、皆さんは本の出版には2種類の方法があることをご存知でしょうか?

 

◇出版の花形「商業出版」とは?

 

 まず、1つ目が商業出版です。これが一般的な本の出版方法です。あなたは著者として、編集者の万全のサポートを受けながら、二人三脚で1冊の本をつくりあげます。編集者もあなたの本を「売りたい」と強く思っていますので、本気であなたの本を、売れる本に仕上げようと努力します。
 

 もちろん、出版に際して、あなたがお金を払う必要はありません。1冊の本をつくるためにはだいたい300万円前後の制作コストがかかりますが(初版制作コスト、編集者の人件費を除く)、それらはもちろん出版社が負担します。
 

 しかもあなたは、著者として印税ももらえます。印税条件は出版社によって異なりますが、たいてい定価の10%くらいです。あなたの本は、全国の書店で並び、多くの人が手に取ってくれるでしょう。

 

自費出版と商業出版の違い

 

 では、もう1つの出版方法とは何か?

 それは「企業出版」「自費出版と言われるものです。その名の通り、あなたが出版に対する制作コストを負担しなければなりません。印税についても、発生しない or 発生しても微々たるものでしょう。
 

 また、全国の書店にもほとんど並びません。初版の発行部数も、商業出版に比べると非常に少なく、全国の書店に並ぶことはほとんどないでしょう。出版社としては、自費出版の本を「どんどん販売して儲けよう!」という気持ちがないからです。あなたからいただくお金で、ある程度は利益がなりたちますし、営業部が限られた労力を使うのは編集者が必死につくった「商業出版」のほうになります。
 

 ですから編集者も、あなたの本のタイトルや原稿も、そこまでちゃんと考えません。編プロに丸なげということもあるでしょう。商業出版では、小見出し1つや、たった一文の表現についても、「本当にこれが読者に響くのか?」という視点で、編集者が細かくチェックを入れます。タイトルやカバーについても、必死に知恵を絞りだし、少しでも多くの読者に届く方法を模索します。
 

 しかし、自費出版では基本的にはそのようなことはしません。お伝えしたとおり、売るつもりがないからです。たとえば、あなたが「タイトルをこのようにしたいです」「カバーの色は〇色にしたいです」と言えば、たいていはその通りになるでしょう。結局は、あなたの「自己満足」のためにつくっている本ですし、お金もいただいているわけなので、編集者は「下手に揉めるよりは、言う通りにつくったほうがいい」と考えるからです。
 

 いかがでしょう。あなたは本を出したいのでしょうか? それとも本を出して、誰かに影響を与えたいのでしょうか?
 

 ただ単に、本を出したいのであれば自費出版もひとつの選択肢です。しかし、より質の高い状態の本を出し、書店に流通させ、あわよくば印税もたくさんもらいたいのであれば……目指すべきは商業出版です。

 最後に、ここまでに挙げた商業出版と自費出版の違いをかんたんにまとめておきます。
 

★商業出版

・製作費は、すべて出版社の負担

・印税も約10%ほどもらえる

・初版は5,000部前後からスタート

・全国書店に流通

・編集者が本気で向き合う

 

自費出版

・製作費は、あなたが負担

・印税ももらえない、もしくは少しだけもらえる

・初版は2000部前後くらい

・ごく一部書店にのみ流通

・編集者は、あなたの本を「売ろう」と本気で向き合わない

はじめまして【自己紹介】

はじめまして、現役の書籍編集者のSと申します。

 

私は、これまで10年ほど書籍編集に携わってきました。
中小の出版社2社での経験を経て、
現在は準大手くらい?の出版社にて、引き続き、書籍編集者を続けております。

 

これまで、自己啓発、ビジネス、健康実用、語学書など、
幅広いジャンルの書籍の企画・編集を担当してきました。
ありがたいことに、その中のいくつかはベストセラーに育っています。

 

また、前職では持ち込み企画(一般応募の企画)のチェックも担当もしており、
年間数百点ほどの応募された企画に目を通していました。

 

こうした経験から、
商業出版を実現したい皆さんのご参考になる情報をお届けしたく、
本ブログを立ち上げた次第です。

 

編集者がどのように企画を見ているのか、
どうすれば編集者の目にとまる企画がだせるのか、
そのあたりについて、
私の経験をもとに有益な情報をお届けできればと思います。

 

※あくまで個人の経験にもとづく情報ですので、
その点をご理解のうえ、参考にしていただけますと幸いです。